1 離婚の方式


 離婚は、人生において大きな転機となりますが、その方式も多く考え惑うところであり、その効
果についても難しい判断、考慮が必要となります。
 平成25年1月1日に施行された家事事件手続法、家事事件手続規則の制定趣旨に副って、離婚
調停等については、当事者が主体的に関与して妥当な解決を図るべく当事者出席の原則が指向され
ていますが、運用としてどのようなところに落ち着くのか、未だ過渡的な状況にあるといえるでし
ょう。

  離婚の方式

   離婚の方式として、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚がありますが、役所では、裁判
  離婚を、広く裁判所の関与のもとでのものとして、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、
  判決離婚の五つとしています。
 
  ⑴ 協議離婚

   ア 協議離婚は、当事者双方が離婚について合意し、提出した離婚届書が受理されることによ
    って成立します(創設的届出)。
     届書には、成人の証人二人の署名・押印が必要であり、未成年者がある場合は、親権者を
    定め(民法819条1項)、届書に記載(戸籍法76条1号)しないと受理されません。
     口頭での届出も可能ですが、当事者双方及び証人が出頭の上協議離婚をする旨陳述しなけ
    ればならず(戸籍法37条)、実際的ではありません。
     また、法令の規定に違反した届出は受理されませんが、誤って受理された場合も離婚は有
    効に成立します(民法765条)。

   イ 離婚の意思は、法律上の婚姻関係を解消する意思で足り(最判昭和57年3月26日、形
    式的意思説)、共同生活を解消するという実質的な意思は必要ないとされています。実質的
    な意思を不要とする点で「婚姻の意思」と相違しています。
     離婚意思は届出受理時にも必要であり、当事者が届出受理前に死亡した場合は無効となり
    ますが、生存中に郵送等で届出た場合は、死亡時に届け出があったものとみなされます(戸
    籍法47条)。

   ウ 当事者は、本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、自らを本人とする離婚の届出を受理し
    ないように申し出ることができます(戸籍法27条の2第3項)。
     離婚届に署名・押印したが後に翻意した場合、勝手に離婚届を提出されないよう予防的に
    行う場合などが考えられます。
     なお、期間の制限がなくなりましたが、不要となったときには取り下げておく必要があり
    ます。
     この不受理申出制度は、創設的届出全般に及んでいます。


  ⑵ 調停離婚
 
   ア 当事者間で離婚の協議がまとまらなかった場合に、いきなり訴訟提起はできず、調停を申
    し立てなければなりません。家庭に関する事件は、原則として、訴訟提起前に家庭裁判所の
    調停を経なければならないとされています(調停前置主義、家事事件手続法257条1項)。
     申立ては、夫婦関係等調整調停申立書を、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事
    者双方が合意で定める家庭裁判所(家事審判規則129条1項)に提出して行います。
 
   イ 調停は、裁判官のみで行うこともできますが(家事事件手続法267条)、通常、家事調
    停委員2名、裁判官1名で構成される調停委員会が調停を行うことになります。
     家事事件手続法の制定(家事審判法の廃止)を機に、離婚等の身分関係事件については、
    当事者が主体的に関与して解決策を模索し、納得できる解決を得る趣旨から、本人出頭の原
    則(家事事件手続法258条1項、51条2項)のもと、運用として、代理人が選任されて
    いても本人の出頭が要請され、各期日における双方当事者立会いのもとでの手続説明の実施
    が指向されています。
     離婚(及び離縁)調停事件については、調停の成立時に電話、テレビ会議システムは認め
    られず(268条3項)、調停条項案の書面による受諾の方法により調停を成立させること
    もできません(270条2項)。

   ウ 当事者間に合意が成立し、調書に記載されたときに(離婚)調停が成立します(家事事件
    手続法268条)。
     調停成立により、調停調書謄本(合意内容全記載)、離婚及び親権者を記載した届出用謄
    本(省略調書謄本)、事案により年金分割手続用の抄本が交付されますが、裁判所の運用に
    よりますので、省略調書謄本等については、別途申請が必要となることもあります。
     離婚の成立を戸籍上反映させる必要があり、調停成立の日から10日以内に離婚届の提出
    が必要です(報告的届出、平成16年人事訴訟法改正)。ただし、相手方の署名・押印、証
    人の記載は不要です。
     届出人(届出義務者)は、申立人ですが、相手方の申し出により調停が成立した場合は相
    手方が届出をすることになり、その場合、「申立人と相手方は、本日、相手方の申し出によ
    り調停離婚をする」等の条項としておく必要があります。  
     婚姻時に姓を変えなかった者が届け出る場合は、他方当事者が新戸籍を作るのかどうかな
    ど確認しておく必要があります。
     届出義務者が届出期間内に届出しないときは、他方当事者も届出が可能です。

   エ 調停が不成立により終了した場合は、その通知から2週間以内に訴訟提起をすると、家事
    調停の申立ての時に訴訟提起があったものとみなされ(家事事件手続法272条1~3項)、
    訴訟に必要な印紙額から調停時の印紙額を控除することができます。
     なお、取下げの場合でも、話し合いの実態があれば訴訟提起が認められる場合もあり、ま
    た、相手方が欠席でも、殊更に出席を拒んでいる場合には調停不成立とされることもありま
    す。

  
  ⑶ 審判離婚
 
   ア 家庭裁判所は、調停が成立しない場合に相当と認めるときは、調停委員の意見を聴き(手
    続が調停委員会で行われている場合)、職権で、「調停に代わる審判」をすることができ、
    子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付等を命じることができます(家事事件手続
    法284条)。
     しかし、離婚以外の審判に対する異議が即時抗告とされていることとは大きな相違があり、
    2週間以内に異議(理由不要)が申し立てられると直ちに失効することから、極めて例外的
    な場合に行われているに過ぎません。
     なお、家事調停手続において、調停に代わる審判に服する旨の共同の申出をすると異議の
    申立てはできないことになっていますが、当事者の意思確認を慎重に行う要請から、離婚
    (及び離縁)事件については、共同申出の対象から除外されています(286条6号)。
   
   イ 審判の確定によって離婚が成立します。審判確定の日から10日以内に、審判書謄本、審
    判確定証明書、戸籍謄本(本籍地でない役所の場合)を添えて、本籍地あるいは住所地の市
    町村役場に離婚届を提出する必要があります(報告的届出)。


  ⑷ 裁判離婚
   
   ア 離婚事件については、調停を申立て、その不成立を経て訴訟提起が可能となるのが原則で
    す(調停前置主義)。
     したがって、いきなり離婚訴訟が提起された場合は、調停に付されることになりますが
    (必要的付調停)、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、例外的
    に訴訟手続が進行します(家事事件手続法257条2項但し書)。その例として、被告が行
    方不明、調停が協議による解決が不能の場合などが挙げられます。
     判決で離婚が認められるためには、民法770条1項に定める離婚事由(①配偶者の不貞
    行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    とき、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)がなければなりません。

   イ 有責配偶者(婚姻の破綻について、専ら又は主として責任のある者)からの離婚請求につ
    いては、①別居が両当事者の年齢及び同居期間と比較して相当長期間に及んでいること、②
    未成熟子がいないこと、③相手方が精神的、社会的、経済的に苛酷な状態におかれないこと、
    という厳しい要件を満たすことが必要とされています。

   ウ 訴訟は、請求の認諾、和解、判決の確定により終了しますが、訴訟にまで至ると円満な夫
    婦関係に戻ることは困難であり、和解の成立による終了の割合が高くなっています。
     認諾、和解が成立した日、判決が確定した日から10日以内に離婚届を提出する必要があ
    ります(報告的届出)。



 

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