Ⅴ 相続


 1 相続の概略

 2 相続人

 3 相続の効果

 4 遺産分割

 5 相続の承認と放棄

 6 遺言

  6-2 遺言の執行

 7 (配偶者の住居の権利)

 8 遺留分

 9 特別の寄与

 

   * 相続法の改正
 
      民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が平成30年7月6日に成立し、
     同月13日に公布されました。
      また、法務局における遺言書の保管等に関する法律も、併せて成立、公布されま
     した。

      民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は、遺言書の方式緩和
     が2019年1月13日、原則的な施行期日(遺産分割前の預貯金払戻し制度、遺
     留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等の⑴、⑶以外の規
     定)は2019年7月1日、配偶者居住権及び配偶者短期居住権等は2020年4
     月1日となりました。
      法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行期日は、2020年7月10
     日となっています。

     ・ 改正法では、次のような方策がとられ、規定の創設や見直しがなされています。

      1 配偶者の居住権保護の方策として、配偶者短期居住権、配偶者居住権
      2 遺産分割について、持戻し免除の意思表示の推定規定、仮払い制度等の創設、
        遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
      3 遺言制度について、自筆証書遺言の方式の緩和、遺言執行者の権限の明確化
      4 遺留分制度の見直し
      5 相続の効力等に関する見直し
      6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

     ・ 配偶者短期居住権は、配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居
      住していた場合、①遺産分割によりその建物の帰属が確定する日までの間(最低
      6か月は保障)無償でその建物を使用できる。②第三者に居住建物が遺贈された
      場合や配偶者が相続放棄をした場合などは、居住建物の所有者から配偶者短期居
      住権の消滅請求を受けた日から6か月を経過するまでの間、引き続き無償でその
      建物を使用することができる、とするものです。
       配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対
      象として、遺産分割における選択肢の一つとして、また被相続人の遺贈等によっ
      て、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権
      利として、配偶者に取得させるものです。

     ・ 遺産分割に関する見直し
       持戻し免除の意思表示の推定規定―配偶者保護の観点から、婚姻期間20年以
      上の配偶者が他方に対して、その居住の用に供する建物又はその敷地(居住用不
      動産)を遺贈または贈与した場合、持戻し免除の意思表示があったものとして、
      原則として、特別受益を受けたと取り扱わなくてよいこととなりました。

       相続された預貯金債権について、二つの仮払い制度が設けられます。
      一つは、家事事件手続法の保全処分の要件を緩和するもので、遺産分割の審判又
      は調停申立があった場合で、仮払いの必要性があるときに、申立てにより家庭裁
      判所の判断で仮払いが認められるようにするというものです。
       もう一つは、各共同相続人は、預貯金債権のうち、口座ごとに、「相続開始時
      の預貯金債権の額×1/3× 当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分」で計
      算される額(ただし、同一金融機関に対しては法務省令で定める額が限度)まで
      単独で払戻しができるとするものです。

       遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合について
       遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、共同相続人全員の同意によ
      り、処分された当該財産を遺産分割の対象に含めることができる。
       共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合、
      当該処分をした共同相続人については、前記の同意を得ることを要しない。

     ・ 遺言制度に関する見直し
       自筆証書遺言について、財産目録(自筆でなくても可)を添付し、目録として
      不動産登記事項証明書、銀行通帳の写し等を添付することも可能です。ただし、
      目録の各ページに署名押印が必要です。

       遺言執行者の権限について、特定遺贈がなされた場合に遺言執行者があるとき
      の遺言の履行は、遺言執行者のみが行うことができます。
       特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言のうち、遺産分割方法の指定として特
      定の財産の承継が定められたもの)がなされた場合、①遺言執行者も対抗要件を
      備えるため必要な行為をすることができ、②預貯金について、払い戻しをする等
      の権限があることを明確にしています。

     ・ 遺留分制度の見直し
       遺留分減殺請求権を行使することにより、遺留分侵害額に相当する金銭債権が
      生じるものとして、金銭債権化されました。
       遺留分権利者から請求を受けた受遺者又は受贈者が、すぐには金銭を準備でき
      ない場合、受遺者らの請求により、裁判所が、金銭債務の全部または一部につき
      相当の期限を許与することができるとしました。

     ・ 相続の効力等に関する見直し
       特定財産承継遺言等により承継された財産につき、現行法を改め、法定相続分
      を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗
      できないことになります。相続させる旨の遺言についても同じですが、遺言の有
      無や内容を知り得ない関係者の取引の安全を確保する趣旨です。

     ・ 相続人以外の者の貢献を考慮する方策
       相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合に、一定の要件を満
      たせば、相続人に対して、金銭お支払いを請求することができるとしました。
       例えば、亡くなった長男の妻が、義父である被相続人の介護等に尽くした場合
      に、相続人に対して金銭の請求ができることになり、その貢献に報い、実質的な
      公平が図られるとされています。



 

相続        
 弁護士 法律事務所 横浜 なら 横浜二幸法律事務所

 横浜二幸法律事務所     〒231-0023 横浜市中区山下町70番地 土居ビル4階
                        TEL.045-651-5115