11 契約
⑻ 雇用
ア 履行の割合に応じた報酬(第624条の2)
改正法は、「労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬
を請求することができる。1使用者の責めに帰することができない事由によって労
働に従事することができなくなったとき。2 雇用が履行の中途で終了したとき。」
とする規定を新設し、従来の解釈を明文化しました。
イ 短期の定めのある雇用の解除(第626条)
改正法第1項は、「雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるとき
は、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。」
として、改正前の「又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべき
ときは」としていた部分を下線部のように改正し、ただし書きを削除しました。
第2項では「前項の規定により恵右訳の解除をしようとするものは、それが使用
者であるときは3箇月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければ
ならない。」とし、労働者については2週間前の予告でよいと改正しました。
なお、労働基準法は、有期労働契約について上限を原則3年としており、本条が
適用される場合は限定されています。
ウ 期間の定めのない雇用の解約の申入れ(第627条)
第627条については、第2項のみ、「使用者からの解約の申入れは」として下
線部を加筆する改正がなされています。
これは労働者の自由が制約されないように、使用者側からの解除のみを規律した
ものです。
なお、第1項は、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができるとします
が、労働基準法第20条が適用されることから、使用者側からの解除は、例外的な
雇用契約の場合に適用が限定されます。
⑼ 請負
ア 注文者が受ける利益の割合に応じた報酬(第634条)
改正前は「請負人の担保責任」の規定でしたが、改正法は、「次に掲げる場合に
おいて、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利
益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、
注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。1 注文者の責
めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
2 請負が仕事の完成まえに解除されたとき。」として、仕事が完成しなかった場
合についての規定を新たに設けました。
イ 請負人の担保責任の制限(第636条)
改正前の第634条及び第635条(請負人の担保責任)が削除され、売買契約
の規定が準用されることになりましたが、第636条本文は、売買契約の契約不適
合責任と表現を合わせて「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない
仕事の目的物を注文者に引き渡したときは」などとしていますが、内容的には改正
前の規定と同趣旨のものです。
ウ 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(第637条)
請負人の担保責任については売買契約の規定が準用されることになりましたが、
担保責任の期間制限について、改正前は、「瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契
約の解除」を「引渡し」あるいは「仕事の終了」から1年以内にしなければならな
いとしていましたが、改正法は、①不適合を「知った時」からとし、②権利行使ま
では要さず、「不適合の通知」をするものとしました(第1項)。
しかし、請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは適
用されません(第2項)。
また、第638条から第640条までが削除され、期間は、全て1年に統一され
ています。通知をした場合等の権利行使については、消滅時効の一般原則が適用さ
れ、不適合を知ってから5年、引渡し又は仕事の終了から10年となります。
エ 第638条から第640条削除
オ 注文者についての破産手続の開始による解除(第642条)
注文者が破産手続開始決定を受けた場合、本条により請負人も契約の解除をする
ことができますが、これは、完成まで仕事を継続させることは請負に酷であること
によります。それ故、改正法は、ただし書きで仕事の完成後の契約解除はできない
と規定しました(第1項)。
改正法は、改正前の第1項後段の内容を変えずに第2項とし、第2項を第3項に
移動しました。
⑽ 委任
ア 復受任者の選任等(第644条の2)
改正法は、復委任についての規定を新設しました。信頼関係を基礎にする委任契
約は、受任者が自ら委任事務を処理するのが原則ですが、改正前も、「委任者の承
諾を得たとき」、「やむを得ない事由があるとき」には、代理権が付与された場合
は第104条、そうでない場合は同条を類推して復委任できると解されており、そ
れを明文化しました(第1項)。
代理権を有する復受任者は、「委任者に対してその権限の範囲内において、受任
者と同一の権利を有し、義務を負う」と規定されました(第2項)。
イ 受任者の報酬(第648条)
無報酬の原則(第1項)、後払いの原則(第2項)はそのままに、第3項が改正
され、1委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をする
ことができなくなったとき、2委任が履行の中途で終了したとき、には既にした履
行の割合に応じて報酬を請求することができるものとしました。
受任者の帰責事由の有無を問わず割合的な報酬請求権を認めたものです。
ウ 成果等に対する報酬(第648条の2)
改正法は、成果に対して報酬が支払われる場合の規定を新設しました。
1 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合に
おいて、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡と同時に、
支払わなければならない。
2 第634条の規定(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)の規定は、委任事務の履行に
より得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
仕事の完成を約す請負契約と類似することから、請負と同様の規律とし(第1項)、
請負について注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を定めた第634条を準用し
ています(第2項)。
エ 委任の解除(第651条)
委任は、各当事者がいつでも解除できるとする第1項に変更はなく、第2項の2
号が追加され、「委任者が受任者の利益(もっぱら報酬を得ることによるものを除
く。)をも目的とする委任を解除したとき。」も損害を賠償するとしました。
当事者に自由な委任の解除を認め、受任者の受ける不利益を損害賠償によって填
補すれば足りるとしたものです。