2 交通事故


 我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を賠償させることにより、
被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とす
るもの(最大判平成5年3月24日)とされています。
 米国のように懲罰的な損害賠償の概念はなく、現実に生じた損害の賠償のみに限られていますし、
被害者は、損害賠償を受けても、決してすべてが報われるということにはなりません。重い障害を
負われた被害者の多くが、元の身体に戻してくれさえすればよいと訴えるのは、本当に切実な気持
ちからでしょう。
 勿論、加害者も、刑事責任、行政責任及び民事責任を負うことになり、人生や家庭生活が破綻す
ることもあるでしょう。
 交通事故のほとんどは、避けることができたと思われます。運転者の細心の注意と相互の譲り合
いによって、少しでも交通事故が減少することを願うものです。


  ⑴ 初期対応
    それでも事故が起こってしまった場合には、適切に対応していくことが大事です。
   
   ア 事故直後
    
     交通事故が発生した場合、警察への届け出は加害者の義務ですが、場合によっては被害者
    からも届け出をしたほうがよいでしょう。事故発生の立証や保険金等の請求の際に「事故証
    明」が必要となります。
     住所・氏名・連絡先、車両のナンバー、自賠責保険、任意保険の情報等を確認しましょう。
     目撃者の氏名、連絡先を聞き、自分でも事故状況を記録しておきましょう。
     軽いけがと思っても速やかに医師の診断を受けましょう。後になって重症と分かることも
    ありますし、事故と傷病との因果関係が問題となることもあります。

   イ 治療
     
     交通事故により負傷したときは、健康保険を使うべきです。業務災害や通勤災害の場合は、
    健康保険は使えず、労災保険を使うことになります。
     特に、被害者にも過失が認められる場合には、過失割合に応じて被害者も治療費を負担す
    ることになりますので(過失相殺)、健康保険を使った場合と自由診療とでは、損害賠償の
    手取額に違いが生じます。
    
     健保診療は1点10円(労災は1点12円)のところ、自由診療では1点20円から30
    円程度が多いと思われますが、ここでは、例として、被害者の過失割合を3割、自由診療を
    保険診療の2倍とした場合を考えてみます。
     健保診療で治療費が100万円であるとすると、病院に支払うべき自己負担額は3割の3
    0万円になりますが、過失相殺により、そのうち7割の21万円は加害者が、3割の9万円
    を被害者が(最終的に)負担することになります。
     これに対し、自由診療では、治療費が200万円になり、その3割の60万円を被害者が
    負担することになります。
     このように、被害者の負担額は、自由診療の場合には健保診療よりも51万円(60万円
    ―9万円)多くなりますが、それは、最終的な被害者の手取額が、自由診療では、健保診療
    より51万円も少ないことを意味します。
     自由診療が、1点30円、40円ということであれば更に差額が大きくなり、被害者の手
    取額がより少なくなってしまいます。
     なお、健保が病院に支払った70万円のうち、7割の49万円は、加害者(その任意保険
    会社、自賠責保険等)に求償し、残る21万円(本来被害者の負担となるもの)は健保が負
    担することになります。

     被害者に過失がない場合であっても、治療費が相当額になる場合は保険診療とするのがよ
    いでしょう。
     何故なら、ほとんどの場合、少なくとも当面は、被害者が治療費を(立て替えて)支払う
    ことになりますが、自由診療では、保険診療に比して高額な治療費全額を支払うことになり、
    負担が大きくなってしまいます。
     また、被害者の保険使用によって治療費が抑えられれば、加害者側(保険会社)の対応の
    厳しさも緩まるでしょうし、その分を別のところで配慮するということも可能となるでしょ
    う。さらには、少しでも自動車保険料の高額化の抑止に繋がるのであれば、社会経済的にも
    メリットともなるのではないでしょうか。

     保険を使用する場合、健保では「第三者行為による傷病届」、労災では「第三者行為災害
    届」を提出しなければなりませんが、それは、本来加害者が負担すべき損害を立替払いし、
    後日、加害者に求償する必要があるからです。
     多少手続の煩雑さはありますが、メリットも多いので、特に傷病の程度が重い場合は必ず
    利用すべきでしょう。

     なお、医療機関によっては、交通事故に健康保険は使えないと説明する場合があるようで
    す。しかし、旧厚生省、厚生労働省は交通事故にも健康保険が使える旨の通達を出していま
    すし、健保組合も給付制限をしてはいません。
     保険医療機関は原則として保険診療を拒むことはできませんが、拒まれた場合は、敢えて
    そのようなところで治療を受ける必要はないと思われますので、病院を変えるのもよいので
    はないでしょうか。

  
  ⑵ 治療の終了・症状固定と損害の種類・算定
   
   ア 治療の終了・症状固定

     被害者は、治療を受けながら、月ごとなど適宜に治療費、通院交通費、休業損害等を請求
    することになります。
     加害者加入の任意保険会社の一括払い制度のサービス(示談代行制度の一環)を受けると、
    治療費は直接医療機関に、通院交通費、休業損害等は被害者に支払われます。
     そして、治療が終了(ないし中止)し、あるいは症状が固定して後遺障害等級該当の有無
    確定すると、そこで初めて総損害を算定することが可能となりますが(したがって、示談交
    渉が可能にもなります)。
     ここに、症状固定(治癒)とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行
    っても効果(回復・改善)が期待できない状態をいい、症状が残存していても、投薬や理学
    療法によって一時的な回復がみられるに過ぎず、医療効果が期待できない場合などは、症状
    固定と判断されることになります。
    
   イ 損害の種類・算定

     損害賠償の対象となるのは、事故と相当因果関係のある損害ですが、症状固定前は「傷害
    による損害」、症状固定後の損害は「後遺障害による損害」と、区別して扱われています。
     傷害による損害としては、治療関係費、通院交通費、休業損害、慰謝料(傷害または入通
    院慰謝料といわれます)等を挙げることができます。
     症状が固定すると、治療費、交通費等は、原則として損害と認められませんが、後遺障害
    等級が認定されると、休業損害に対比されるものとして逸失利益(将来得られるはずであっ
    た利益、得べかりし利益)が、また、傷害慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料が損害となりま
    す。

        事 →  治療関係費   ← 症 →  ×
        故 →  通院交通費   ← 状 →  ×
        発 →  休業損害    ← 固 →  逸失利益
        生 →  慰謝料(傷害) ← 定 →  慰謝料(後遺障害)
           
             傷害による損害    |   後遺障害による損害
                      

     ・治療関係費には、治療費の他診断書等の文書料も含まれますが、必要かつ相当な実費
      に限られ、必要性、相当性がないものは過剰診療、高額診療として否定されます。
      整骨院の施術等は、医師の指示があるか、有効かつ相当な場合などに認められる傾向
      があります。

     ・通院交通費は、原則、バス、電車代であり、タクシーの利用は相当性の認められる場
      合に限られます。

     ・休業損害は、受傷のために休業したことによる現実の収入減です。
      給与所得者の場合、事故前の収入を基礎とし、有給休暇の使用は休業損害と認められ
      ます。

     ・逸失利益は、基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ
      係数によって算定されます。
      (なお、死亡の場合は、基礎収入額×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応
       するライプニッツ係数となります。)

     ・傷害(入通院)慰謝料は、訴訟基準では、入通院期間を基礎として算定されています。

     ・後遺障害慰謝料は、1級から14級の等級ごとに定められた基準額を基に算定されます。
      (死亡の場合は死亡慰謝料となります。)

     損害賠償額は、各損害を合計した総損害(あるいは一部)に素因減額や過失相殺をし、そ
    こから損害の填補(既払金の控除)をして算出することになります。

   ウ 損害算定基準その他

     損害賠償の基準には、大きく分けて、自賠責保険基準、任意保険基準、訴訟基準がありま
    す。
     自賠責保険は、強制保険ともいわれますが、被害者救済を目的として最低限度の補償をす
    るものであり、任意保険は自賠責保険の上積み保険(人身事故の賠償額が自賠責保険を上回
    る場合にその差額をカバーする保険)です。
     したがって、任意保険は、自賠責保険の基準額を下回ることはできませんが、それでも、
    慰謝料については訴訟基準とはかなりの差があるのが一般です。
  
     なお、弁護士法72条の問題に関し、家庭用自動車総合保険については、被害者の直接請
    求権を規定し(当事者性)、その他一定の要件を具備することにより、損害保険会社等の対
    人・対物示談代行制度の合法性が、日本損害保険協会と日弁連との間で確認されています。
    (他の保険については、保険会社が示談代行をすることはできません)

  
  ⑶ 損害賠償額の調整

   ア 過失相殺
 
     損害賠償の基本理念は、「被害者の救済」と「損害の公平な分担」であるところ、後者に
    基礎をおくものが過失相殺ですが、本来の意味の相殺ではありません。
     不法行為における過失相殺では、被害者にも過失があった場合に、賠償額を定めるについ
    てその過失を斟酌することができるとされますが(民法722条2項)、債務不履行の場合
    とは違い、義務的ではなく、また、加害者を免責することはできません。
 
     過失相殺における過失は、不法行為の要件としての過失(注意義務違反)とは異なり、単
    なる不注意(落ち度)で足りるとし、過失相殺能力も、事理弁識能力があれば足り、責任能
    力(行為の責任を弁識するに足る知能)を要しないとするのが、通説、判例です。
     そして、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の
    過失(「被害者側の過失」)がある場合にも、過失相殺を認めています(最判昭和42年6
    月27日)。被害者が過失相殺能力を有しない幼児で、親の監護が不十分であった場合など
    がその典型例です。

     過失相殺をするについては、加害者、被害者双方の過失を比較して相殺率を決めるという
    相対的な考えが、判例・通説であり、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」等に
    拠って、事故類型に応じた過失相殺率が判断されています。

   イ 素因減額
  
     素因減額とは、被害者の体質的な素因(身体的な特徴)や心因的な素因によって損害が発
    生・拡大した場合に、損害賠償額を一定割合減額するものであり、民法722条2項の類推
    適用とされています。
  
     心因的な素因について、素因減額を認めた判例もありますが(最判昭和63年4月21日)、
    被害者の心因的な要因が通常想定される範囲・程度を超える場合に限り認められるべきと考
    えられます。
     身体的な特徴について、判例は、斟酌すべき身体的特徴か否かは、単なる身体的特徴では
    なく、「疾患」か否かで区別しているものと解されます(最判平成8年10月29日)。
     
     なお、素因減額と過失相殺が併存する場合には、まず素因減額をし、次いで過失相殺をす
    るというのが通常です。 

   ウ 好意同乗減額
  
     無償で、好意による自動車同乗中の事故により負傷などした場合に、好意による同乗を理
    由に運転者の損害賠償額から減額することをいいます。
     最近の裁判例の傾向として、同乗者にも事故の発生について非難されるような事情がある
    場合に限り認めているといえます。

   エ 損益相殺
  
     損益相殺とは、損害を被った被害者が、原因を同じくして利益をも受けた場合に、その利
    益を損害から控除することをいいます。
     各種社会保険等について控除されるか否かが問題となりますが、控除制限があったり、過
    失相殺の方法や充当の方法も問題となり、錯綜していて、正確に理解するのが難しい分野で
    す。


  ⑷ 示談交渉、紛争の解決方法
    
    事故による傷病が治癒し、あるいは症状固定して後遺障害等級の有無・程度が明らかになる
   と、紛争の解決に向けて、示談交渉をし、更には法的手続等に進むことになります。

   ア 示談交渉 

    a 加害者が任意保険に加入している場合
  
      加害者が任意保険に加入していると、被害者の同意のもとで、任意保険会社が示談交渉
     に当たることになりますが、その場合は、「一括払い」制度が利用されています。

      一括払いは、任意保険会社が示談代行サービスの一環として行っているもので、人身に
     係る損害額を一括して被害者に支払い、後に、自賠責保険によって支払われるべき分を自
     賠責保険会社に求償して回収する制度です。
      任意保険は、自賠責保険の上積み保険で、自賠責保険とは別個の保険であり、被害者と
     しては、本来、自賠責保険と任意保険の双方に個別に請求すべきところ、一括払いの制度
     により、そうした手間を省くことができます。
 
      一括払いに際して、任意保険会社は、支払の見通しをつけ、自賠責保険からの回収を確
     実化するために、自賠責保険の有効性、支払対象か否か、重過失減額の有無、後遺障害等
     級の有無・程度等を事前に自賠責保険に照会して確認をしますが、これを「事前認定」と
     いいます。
      しかし、事前認定では、その制度目的から、後遺障害等級の認定がなされても直ちに自
     賠責保険金が支払われるわけではありません。
      後遺障害逸失利益や慰謝料は、最終的な段階で算定されるものであり、また、過失割合
     等の調整がなされる必要もあることから、示談の成立によって支払われることになるのが
     通常です。
 
      示談交渉が難航した場合に、被害者は、一括払いを解除し、被害者請求をして自賠責保
     険金を得ることができますが、後遺障害に係る損害賠償金についても、既に事前認定によ
     り後遺障害等級認定がなされているので、それほど時間はかかりません。
      なお、被害者請求では、発生した費用を請求できるほか、仮渡金制度も設けられていま
     す。

    b 当事者による示談交渉
  
      加害者が任意保険に加入していない場合、被害者が任意保険会社による示談代行を拒否
     した場合、任意保険会社による示談代行サービスが行われない場合には、当事者同士で示
     談交渉を行うことになります。

      任意保険会社による示談代行サービスは、被害者が承諾しない場合のほか、自賠責保険
     がついていない場合、損害額が自賠責保険の限度内の場合、損害額が支払限度額を超える
     場合など、その根拠となる当事者性を満たさない状況のときには行われません。

    c 示談段階における賠償の基準等
  
      和解や示談においては、訴訟基準を採用せず、それよりも多少減額したところで合意が
     なされているのがほとんどといえるでしょう。
      なぜなら、訴訟になった場合のコストや手間・暇がかからず、紛争の早期円満解決とな
     るメリットがあり、裁判基準から多少減額することに合理性が認められるからです。
      また、互譲により解決し、弁護士費用は損害に算入せず、遅延損害金も付加しないとす
     るのが一般的です。

   イ その他の紛争解決手続

     示談交渉による紛争解決が困難となると、ADR(裁判外紛争解決機関)、調停、訴訟等
    の第三者機関を利用して解決を図ることになります。
     後遺障害が重度の場合や死亡事案の場合は、裁判基準との乖離が大きくなりますから、費
    用をかけても、訴訟等の法的手続をとるメリットがあります。そして、判決となれば、弁護
    士費用や遅延損害金が加算されることもあって、訴訟となる蓋然性が極めて高くなります。
     なお、近時、弁護士費用保険が一般化しつつあり、物損事故等の少額事件についても法的
    手続がとられる傾向にあります。


  ⑸ 時効

    交通事故の損害賠償請求についても、権利を行使せずに一定の期間が経過すると時効(債務
   者の時効の援用を要する)により消滅します。


   ア 交通事故の損害賠償請求は、「不法行為に基づく」損害賠償請求となるところ、現行法で
    は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、
    時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする」(724
    条)としています。
     令和2年4月1日施行の改正法は、現行法後段の20年の期間について除斥期間と解され
    ていたものを時効期間と明確に規定しました。また、人身事故については、時効期間が5年
    間に延長されました(724条の2)。

     除斥期間は、消滅時効と同様に、時の経過に権利消滅の効果を認める制度ですが、必ずし
    も一定の事実状態が継続していることや当事者の援用を必要としないこと、時効の中断、時
    効の停止が認められないことなどにおいて消滅時効と異なるとされていました。
     20年の期間制限については、条文上その法的性質が明らかではないため、古い判例は消
    滅時効とし、最判平成元年12月21日は除斥期間と解するなど判断が分かれるところとな
    っていましたが、改正法は、消滅時効であることを明らかにしました。これにより、被害者
    が救済される範囲が広がったといえるでしょう。

   イ 法改正に伴う経過措置として、
 
    ① 旧法の724条後段の20年の期間が新法施行日(令和2年4月1日)前に経過してい
     た場合は、旧法が適用され、経過していない場合には新法が適用されます(附則35条1
     項)。

    ② 不法行為による生命・身体に対する侵害は、新法施行時(令和2年4月1日)に旧法7
     24条前段の短期(3年)の時効が完成していた場合、新法の724条の2は適用されま
     せん。
      新法施行時に短期(3年)の時効が完成していない場合の時効期間は、新法が適用され、
     不法行為により生命・身体を侵害された日から5年となります(附則35条2項)。

   ウ 短期消滅時効の起算点 

     消滅時効の起算点は、被害者又はその法定代理人が「損害及び加害者を知った時」です。

     「損害を知る」とは、加害行為ではなく損害が発生したことを知ることですが、損害の程
    度や数額を具体的に知ることまでは必要ではないとされています。
     物損事故の場合は事故日、死亡事故の場合は死亡日、後遺障害の場合は症状固定日が短期
    消滅時効の起算日ですが、傷害による損害の場合は注意が必要です。多くの裁判例は、治癒
    日ないし症状固定日としていますが、事故日とする裁判例、少数説もありますので、念のた
    め事故日と考えておくのが無難といえます。

     「加害者を知ったとき」とは、損害賠償請求が事実上可能な程度に知った時であり、賠償
    義務者を具体的に特定して認識し、容易にその氏名・住所を知りうる状態とされます。

   エ 時効期間の計算方法

     時効の起算点と時効期間の計算方法を区別する必要があります。不法行為の消滅時効の起
    算点は上述したとおりですが、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間初日
    は、参入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りではない」(民
    法140条)とされているところ、不法行為の消滅時効期間は年をもって規定されています
    ので、初日不算入が原則となります。

  ⑹ 自賠責保険の時効

    自賠責保険については3年(2010年3月31日以前の事故については2年)で時効とな
   ります。

    ① 加害者請求 賠償金を支払った日(起算点)の翌日から3年

    ② 被害者請求 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時(通常事故日)の
            翌日から3年
       
            具体的な場合には、次のようになります。 
             傷害の場合    事故日の翌日から3年
             後遺障害の場合  症状固定日の翌日から3年
             死亡の場合    死亡の翌日から3年

    ③ 仮払金の請求 事故日の翌日から3年

    ④ 政府の保障事業への請求 事故日の翌日から3年

       ひき逃げ事故、盗難車による事故、自賠責保険(共済)が付保されていない自動車に
      よる事故
       子の請求は、時効中断が認められていません。

    なお、加害者契約の任意保険会社が「一括払い」(被害者に自賠責保険分を含めて損害額を
   支払ったうえで自賠責保険に請求する)をしている場合は、自賠責保険に対する被害者請求に
   係る時効は進行しないという扱いとされているようです。
    一括払いが解除される(する)と消滅時効が進行することになります。

  ⑺ 法定利率
    
    今般の債権法改正により法定利率に関しても改正がなされたため、損害賠償についても大き
   な影響が生じることになりました。
    改正の概要は、①改正当初の法定利率を3%とし、3年ごとに利率の見直しを行う。②中間
   利息控除についての明文規定を置いた。③法定利率を用いる場合の基準時を定めた。④商事法
   定利率の規定を削除した、ということになります。

   ア 遅延損害金

     不法行為に基づく損害賠償については、これまでは、不法行為(事故)の発生時から、法
    定利率である年5%の遅延損害金が生じるとされてきましたが、令和2年4月1日以降は法
    定利率が年3%となり、3年ごとに利率の見直しがされることになります。
     なお、一旦利率が定まれば、その後の利率の変動の影響を受けることはありません。
     遅延損害金に関しては、被害者は、これまでよりも減額となる不利益を受けることになり
    ます。

   イ 中間利息控除

     改正法417条の2は「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場
    合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の
    請求権が生じた時点における法定利率により、これをする」としました。
     交通事故については、事故時の法定利率を用いることになり、逸失利益を算定する場合(
    死亡、後遺障害)の中間利息控除に用いられる利率の基準時は不法行為時とされています。
     したがって、法定利率が5%から3%になる(当面)ことにより、令和2年4月1日以降
    の事故については、それ以前の事故の場合に比して、逸失利益の算定額が増額することにな
    ります。
     逸失利益が生じる被害者については、従前よりも逸失利益の額が多くなるという利益を受
    けることになります。

  ⑻ 相殺
     
    令和2年4月1日施行の改正法は、不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺につい
   ても改正を加えています。
    従前「債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗で
   きない」と規定し、そのような相殺を一律に禁止していましたが、改正法509条は、「悪意
   による不法行為に基づく損害賠償の債務」と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」
   を受働債権とする相殺に限定しました。
    それによって、物損同士の事故の場合には、一方当事者の意思表示により相殺が可能となり
   ました。



 

 交通事故
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