1 損害賠償とは
2 交通事故
3 労働災害
4 製造物責任
* ここでは、損害賠償について説明をしてみました。
・ 損害賠償とは、違法な行為により生じた損害をその原因を作った者が填補して、
損害が発生しなかったと同じ状態にすることをいいます。
民法上、損害賠償義務を生じる原因としては、債務不履行と不法行為が主なも
のとなっています。
損害賠償の方法としては、金銭賠償を原則とし、例外的に原状回復が認められ
ることになっています。
賠償される損害の範囲は、加害行為と相当因果関係のある損害に限られます。
また、債務不履行に基づく場合と不法行為に基づく場合とでは、立証責任や効
果等に相違があります。
・ 交通事故については、膨大な裁判例があり、そこから「損害賠償額算定基準」
や「過失相殺率の認定基準」が生み出され、書籍となっています。
前者には、赤い本、青い本、緑本、黄色い本があります。赤い本は、広く使用
されていますが、緑本は大坂、黄色い本は名古屋で使用されています。
人身損害についての基準は、他の事故による人身損害についても参考とされて
います。
・ 労働災害には、「業務災害」と「通勤災害」があり、いずれも労災保険給付の
対象となります。
したがって、通勤災害については健康保険を使用することはできず労災保険を
使用することになりますが、手続が面倒になる反面、被害者に過失があっても療
養(補償)給付は全額給付されるほか、休業特別支給金が給付され、その分損害
賠償としての休業損害より多額となります。
業務災害については、使用者・企業に故意過失があれば、不法故意責任を負い、
安全配慮義務に違反すれば債務不履行責任を負うことになります。
労災保険では慰謝料の給付はありませんので、使用者・企業に対する損害賠償
請求の余地が生じます。なお、労災保険給付の上積み補償給付を設けている使用
者・企業については、損害賠償請求との関係が問題となります。
・ 製造物責任は、製造物(製造又は加工された動産)の欠陥(通常有すべき安全
性を欠いていること)により他人の権利を侵害した場合に損害賠償責任を認める
ものであり、「過失」ではなく「欠陥」に責任原因を求めたところに特徴があり
ます。
欠陥は、「設計上の欠陥」、「製造上の欠陥」、「指示・警告上の欠陥」に分
類されています。
なお、損害が当該製造物のみに生じた場合には、製造物責任法(PL法)の対
象とはなりません。
・ 損害賠償の対象となる事件・事故には、医療過誤事件、介護施設での事故、商
業施設内での事故、漏水事故等々がありますが、過失に基づく人身事故について
は、交通事故における損害賠償の基準が事実上使用されています。
物損事故については、交通事故における車両損害が修理費用か時価評価のどち
らか低い額が損害とされますが、交通事故以外の物損害についても原則として同
様に考えられています。
例えば、漏水事故により建物が損傷した場合、先ず工事費用から被害回復の目
的の範囲を越えた改装部分に相当する工事費用額を控除し、その後原価償却等を
考慮して時価評価額を算定し、その限度で賠償を認めるのが原則です。
この点、7年ごとに改装をするのが通例の店舗について6年目に事故が発生し
た場合に、(被害回復の目的の範囲を越えた工事費を控除した)残額の7分の1
を事故と相当因果関係のある損害とした高裁判決があります。