法律相談は民事紛争解決の端緒となりますが、相談窓口が増え、相談方法も多様になっています
し、利用の目的も、紛争の解決は勿論のこと、深刻化の回避、予防、セカンドオピニオンとしてな
ど様々です。
法律相談のみで紛争の解決をみることもありますので、目的やそれぞれのメリット、デメリット
を勘案し、じょうずに利用されるとよいでしょう。
⑴ 法律相談について
有料での「法律相談」と「その表示」ができるのは、弁護士と認定司法書士(一定限度内)
に限られます。
認定司法書士とは、研修を終了し、考査に合格した司法書士であり、簡裁訴訟代理等関連業
務(簡裁の訴訟手続の対象となる民事紛争であって、紛争の目的の価額が140万円を超えな
いもの)を行うことができますが、法律相談についても、その範囲内に限られています。
司法書士及び行政書士については、一定の書類の作成が基本業務であり、その相談は、当該
書類作成のための法律常識的な知識に基づく整序的な事項に限られると解されており、法律相
談は業務の範囲外となっています。
なお、無料であれば、だれでも法律相談をすることが可能であり、その例として、法学部の
学生が行っている法律相談などがあります。
⑵ 法律相談の窓口、方法
ア 行政の無料法律相談
都府県や市町村といった地方自治体は、行政サービスの一環として、弁護士による無料法
律相談を行っています。
概要としては、相談日・時間帯が定まり、相談時間は30分程度で、予約制が普通です。
自治体によっては、訴訟中の案件の相談は受けないなどとしています。
行政の無料法律相談の目的は、それによる紛争や問題の解決そのものというよりも、参考
として、法律に関する一般的な説明、情報提供や助言を行うものであり、いわば、問題解決
の入口としての相談ということになります。
なお、神奈川県内では、相談を担当した弁護士による直接受任を認めないのが通常ですが、
その趣旨は、公の場が私人の営業の場になってはならず、たらい回しになる相談者の不都合
よりも優先されるべきというところにあります。
もし、相談者が、継続相談や事件の依頼を希望する場合には、弁護士会を通じて連絡をと
ることが可能となっていますが、受任義務はありませんので、当該弁護士の判断次第となり
ます。
イ 法テラスの無料相談
日本司法支援センター(通称法テラス)は、総合法律支援法に基づき平成18年に設立さ
れた法務省所管の公法人であり、情報提供業務、民事法律扶助業務、犯罪被害者支援業務、
司法過疎対策業務、国選弁護等関連業務を中心としたサービスを行っています。
無料で法制度や相談窓口を案内しており(情報提供業務)、また、民事法律扶助業務とし
て、資力が一定額以下で、民事法律扶助の趣旨に適する場合には、無料法律相談を受けるこ
とができます(法律相談援助)。
無料相談は、1回30分程度、一つの問題につき3回までで、法テラスと契約の弁護士、
司法書士が、その事務所か法テラスにおいて行います。電話または法テラスを訪れての事前
予約が必要です。
なお、法律相談の後、審査を経て援助開始決定がなされると(更に、勝訴の見込みがない
とはいえないことという要件が必要です)、書類作成援助や代理援助を受けることができ、
弁護士等費用の立替がなされて、それを毎月分割返済すればよいことになっています。
ウ 弁護士会の相談センター
神奈川県弁護士会は、各支部等の県内各地に法律相談センターを設けて、法律相談に応じ
ています。費用については、総合法律相談、離婚相談、相続相談、家庭の法律相談、外国人
法律相談、働く人の法律相談は有料(5000~7500円)ですが、債務整理相談、子供の
人権相談、消費者被害相談、小規模な事業者の経営に関する相談、賃貸住宅なんでも相談は
無料となっています。
また、法の日等の記念行事や懸案問題対策として、適時、臨時の無料相談も行っています。
弁護士会の法律相談は、臨時の相談を除き、相談者から依頼がある場合は、原則として、
受任義務があることが大きな特徴となっています
なお、法律相談センターの案件を受任した場合、統一様式の契約書を交わし、一定額を超
える着手金、報酬金については承認を要することとし、着手時、終了時には報告書を提出す
ることになっています。
エ 弁護士による法律相談
個々の弁護士や法律事務所も法律相談を行っており、電話やメールでの相談に応じるとこ
ろもあります。
原則として有料ですが、相談料を無料としたり、事件を受任する場合は着手金の一部に充
当する扱いをしている弁護士、事務所もあります。
面談の場合、相談日、時間帯など相談者の都合に合わせることができ、その場での質疑応
答や提示された資料等により、即座の、具体的な事案に則した回答が可能となります。
また、継続相談として、文献、判例等の調査結果を踏まえたうえで、事案について更なる
検討、協議をすることもできます。
オ 認定司法書士の法律相談
認定司法書士は、前述のとおり、簡裁訴訟代理等関連業務の範囲内で法律相談が可能です
が、家事事件(離婚、相続等)や経済的利益が140万円を超える民事事件については、代
理権が認められず、法律相談もできません。
カ インターネット上の相談
近時は、インターネット上でも法律相談が行われるようになっています。
しかし、情報量が少ないこと、即時のやり取りができないことなどから、ごく一般的、定
型的な相談及び回答に止まらざるを得ないでしょう。
⑶ 相談窓口、相談方法の選択
典型的な紛争で、差し迫ったものではなく、面談時間もとれないということであれば、イン
ターネット、メールやファックスによる相談もよいでしょう。
しかし、より具体的な判断、意見が必要であれば、即時の質疑応答が可能となる電話や面談
を選択することになりますが、電話の場合、資料の提示ができないこと、回答者の情報に欠け
る点で十分とはいえません。
事件の依頼をも予定しているのであれば、面談による法律相談を選択すべきでしょう。事件
そのものについても具体的な分析、判断が可能となり、事務所の状況や雰囲気も分りますし、
人柄や相性の良し悪しについても判断しやすくなります。
大事な問題を託すについては、多少の手間暇、費用を惜しむべきではないと思います。
資力要件を満たす場合には、弁護士費用が低額となりかつ分割返済、場合によっては免除と
なることがありますので、法テラスを利用されるとよいでしょう。
弁護士会の法律相談センターを利用すると、前述のとおり、費用についての審査や報告義務
がありますので、一応の安心を得られるでしょう。
ただ、いずれも、原則として担当弁護士を選ぶことはできません(法テラスの場合、契約弁
護士の持込案件、個別案件では、弁護士を選ぶことになります)。
自身で弁護士を選ぶ場合、いかにして(その人にとって)信頼するに足る弁護士を探すかが
問題であり、難しいところです。
⑷ 法律相談を受ける際の準備
法律相談を効率的かつ充実したものにするためには、事前の準備が必要です。
最小限度として、紛争の経緯、争点について簡潔にまとめ、質問・相談事項の簡単なメモを作
成しておくことをお勧めします。関係者や物件等が複数ある場合には、関係図等の図面を用意
しておくのもよいでしょう。
殊に、時間制限のある相談では、事案の説明にほとんどの時間を費やしてしまったり、大事
なことを聞き忘れてしまうことが往々にしてありますので、心情的なことは控えて客観的な事
情に絞って説明し、順序を考えて質問することが肝要です。