11 契約
⑿ 組合
ア 他の組合員の債務不履行(第667条の2)
「第533条及び第536条の規定は、組合契約については、適用しない。」
(第1項)、「組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないこ
とを理由として、組合契約を解除することができない。」(第2項)とする規定
の新設です。
組合が団体的性格を有する特殊性から契約総則の適用が制限されてきましたが、
同時履行の抗弁権、債務者の危険負担の適用はないこと、債務不履行による解除
はできないことが明文化されました。
イ 組合員の一人についての意思表示の無効当(第667条の3)
「組合員の一人について意思表示の無効又は取消の原因があっても、他の組合
員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない。」とする規定が新設
されました。
ウ 業務の決定及び執行の方法(第670条)
組合の業務は組合員の過半数をもって決定しますが、「各組合員がこれを執行
する」ことが明文化されました(第1項)。
組合契約の定めるところにより、組合の業務の決定及び執行を組合員以外の第
三者に委任することもできることが明文化されました(第2項)。
第3項が新設され、業務執行者が数人の時は、その過半数をもって組合の業務
を決定し、「各業務執行者がこれを執行する」とされました。
同じく新設された第4項で、「組合の業務については、総組合員の同意によっ
て決定し、又は総組合員が執行することを妨げない。」と規定されました。
第5項に、改正前の第3項が移動しています。
エ 組合の代理(第670条の2)
法人格のない組合は、組合員が全員で法律行為をすることになりますが、非現
実的であるため、代理方式がとられ、それが明文化されました。
各組合員は、組合員の過半数の同意を得て、他の組合員の代理をすることがで
きます(第1項)。
業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理し、業務執行者が数
人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、
組合員を代理します(第2項)。
組合の常務については、各組合員又は各業務執行者が単独で組合員を代理する
ことができます(第3項)
オ 委任の規定の準用(第671条)
組合の業務を決定し、又は執行する組合員については、第644条から第65
0条までの規定が準用されます。
善管注意義務、復受任者の選任、報告義務、受取物引渡義務、金銭消費につい
ての責任、報酬請求権、費用前払請求権、費用等償還請求権の規定となります。
カ 業務執行組合員の辞任及び解任(672条)
組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員に業務の決定及び執行
を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができ
ない(第1項)。
改正前の「で」を太字部のように改め、下線部の文言が加わりました。
第2項は従前どおりです。
キ 組合員の組合の業務及び財産状況に関する検査(第673条)
各組合員は、組合の業務及び組合財産の状況を検査することができますが、「組
合の業務を執行する権利を有しないときであっても」から「組合の決定及び執行を
する権利を有しないときであっても」と改正されました。
ク 組合の債権者の権利の行使(第675条)
組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる(第1項)
との規律が明文化されました。
第2項として、「組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担
の割合又は等しい割合でその権利を行使することができる。ただし、組合の債権者
がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、その割合
による」との規定が新設され、主張立証責任も明確化されました。
ケ 組合員の持分の処分及び組合財産の分割(第676条)
組合財産は、総組合員の共有に属しますが(第668条)、持分の処分が制限さ
れ(本条第1項)、組合財産の分割請求が禁止されます(第3項―第2項から移動)。
改正法は、第2項として、「組合員は、組合財産である債権について、その持分
についての権利を単独で行使することができない」とする規定を新設し、組合財産
に属する債権には分割主義の原則が適用されないとする解釈を明文化しました。
コ 組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止(第677条)
改正前は、「組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権とを相殺すること
ができない」と規定していましたが、「組合員の債権者は、組合財産についてその
権利を行使することができない」と改正し、全面的な権利行使の禁止を明確にしま
した。
サ 組合員の加入(第677条の2)
新設規定です。
組合員は、全員の同意又は組合契約の定めるところにより、新たに組合員を加入
させることができます(第1項)。
組合の成立後に加入した組合員は、加入前に生じた組合の債務を弁済する責任を
負いません(第2項)。
シ 組合の解散事由(第682条)
改正前は、解散事由として、「事業の成功又はその成功の不能」を規定していま
したが、改正法は、それに加えて、組合契約で定めた存続期間の満了(第2号)、
組合契約で定めた解散事由の発生(第3号)、総組合員の同意(第4号)を追加し、
解釈上認められていたものを明文化しました。
ス 組合の清算及び清算人の選任(第685条)
第2項の、清算人の選任は、「総組合員」の過半数で決するとの規定が、「組合
員」と改められました。「総」は不要として、他の条文と表現を同じくしたもので
す。
セ 清算人の業務の決定及び執行の方法(第686条)
第670条の第3項から第5項に業務執行者の権限等の規定が、第670条の2
に組合の代理の規定が新設され、各清算人は清算事務の範囲内で全ての組合員を代
理する権限を有するとする判例・学説を明文化し、準用規定が変更されました。
ソ 組合員である清算人の辞任及び解任(第687条)
第672条(業務執行組合員の辞任及び解任)の規定は、組合契約の定めるとこ
ろにより組合員の中から清算人を選任した場合について準用する。
改正前は、「組合契約で」とされていた部分が下線部のとおりになりました。
組合員である清算人は、正当な事由がなければ辞任できず、正当な事由がある場
合に限り、他の組合員の全員一致によって解任することができる。
⒀ 不法行為
ア 損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺(第722条)
第1項につき、「第417条及び第417条の2の規定は、不法行為による損害
賠償について準用する。」として、準用条文である第417条の2(中間利息の控
除・新設規定)が追加されています。
イ 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(第724条)
改正前の第724条後段の「不法行為の時から20年の期間制限」について、判
例は除籍期間としていましたが、改正により、消滅時効であると明記しました。
これにより、不法行為に基づく損害賠償請求権は、主観的起算点から3年、客観
的起算点から20年で時効消滅することになりました。
ウ 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
(第724条の2)
不法行為による損害賠償請求権は損害及び加害者を知った時から3年間で時効消
滅するとする前条第1号とは別に、人の生命又は身体を害する不法行為による損害
賠償請求権については、主観的起算点から5年とする規定が新設されました。